冬の恋、夏の愛
莉乃ちゃんは、少しずつ、少しずつ距離を近づけてくれる。でも、自分からは歩みよれない。こちらから触れようものなら、すぐに離れていってしまいそうで怖かった。

付き合い始めて、手を繋ぐまではさほど時間はかからなかったけれど、次のステップはいつになるのか……。さすがに女の子の方から強引に唇を奪う……なんて、よほどの肉食系でなければ、できない。

……と、いうことは。やっぱりオレがリードしないと、次のステップには進めない……ってことか?

「寿彦さーん!」

オレを呼ぶ声にハッとして、視線を向けた。真冬の午後、手を振る莉乃ちゃんは、ロングブーツにミニスカートの出で立ち。

アレ? なんだかいつもと違う……。どちらかというとパンツ派で、たまに見るスカートも、ここまで短くないのに。

目のやり場に困る。思わず、スッと視線をそらした。

「お待たせ」

「あ、ああ……」

莉乃ちゃんはいつものように指を絡ませてきた。なるべく視線は上に、を心がけた。

「どうしたん? 寿彦さん、なんか怒っている?」

戸惑うオレを、怒っていると勘違い。怒るわけがない。むしろよろこんでいる。でも少し、怒っているといえば怒ってはいる。

「いや、別に……」

「ホンマに? なんか、いつにも増してムスッとしているような……」

「そ、それは……」

理由を説明するために、莉乃ちゃんに視線を向けた。まんまるい目がオレをみつめた。

「誘惑するのは、ひとりだけでいいから」

「誘惑?」

言葉の意味がわかっていないらしい。莉乃ちゃんは、難しい顔をしていた。

「そのスカート、男はみんな見ている」

「そんなわけないよ!」

莉乃ちゃんは、ハハッと笑っていた。自分のかわいさに全く気づいていない莉乃ちゃんには、いろんな意味でドキドキさせられてばかりだ。


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