冬の恋、夏の愛
羽島莉乃は、オレより五歳も年下だった。製菓会社の営業をしているから、黒いパンツスーツ姿で、薄化粧なんだなと、ひとりで納得した。

アルコールは好きらしく、頬を赤く染めながらよく飲んでいた。営業をしているだけあって、人当たりもいい。そして、なによりも笑顔がかわいい。

それだけに、申し訳なく思う。涼介カップルはともかく、気のきいた台詞も言えない、オヤジの相手をさせられる羽島さんに対して。せっかくのクリスマスなのに。さらには誕生日なのに。

涼介の気遣いはありがたいが、オレはひとりでいいんだよ。女の子の扱いがわからない、無愛想な男なんか。

それでも店を出る頃、羽島さんは頬を赤く染めたまま、「楽しかったです」と言ってくれたから、ほんの少し救われた気がした。

「じゃあ、羽島さんをよろしくね」

ぼんやりと、街の灯りをながめるオレに羽島さんを託したカップルは、夜景に吸い込まれるようにして姿を消した。

初対面の女の子とふたりっきりにさせられるなんて……想定外の出来事に、ぽかんと口を開けた。



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