冬の恋、夏の愛
いつもの街で、とくになにをするわけでもなく、ぶらぶらと歩く。手を繋いで、冬の海を眺めながら。ただ、やっぱり寒い。山下公園のベンチに座り、温かい飲み物を口にした。
「これ」
座るなり、莉乃ちゃんが鞄の中から小さな紙袋を取り出した。
「なに?」
「もうすぐバレンタインやから」
頬を赤く染めながら、笑う。ああ、バレンタイン、ね? 本命は、オレ。そう思ってもいいのかな?
「ありがとう」
よろこんで受け取る。でも、顔には出さない。うれしいくせに、顔には出せない。
「寿彦さん、どんなのが好きかな? って迷った」
「どんなのでも、甘いものなら」
莉乃ちゃんのくれるものなら、なんでも好き。なんて、言えるわけがない。チラリとスカートに視線を送ると、寒そうに見えて立ち上がった。
「どうしたん?」
急に立ち上がったオレにつられて、莉乃ちゃんも立ち上がる。寒い中、おしゃれをしてくれたんだ。愛しくてギュッと抱きしめたい衝動に駆られながらも、ギリギリのところで平静を装った。
「寒いから、暖かいところに行こう?」
「ほな、マリンタワーに行きたい」
本当は高いところ、苦手だけれど。莉乃ちゃんの、小さな願いを叶えたくて「ああ」と返事をした。自分から握れない手が、オレの手をギュッと握ると、マリンタワーに向かって歩き始めた。
それだけでオレは、充分幸せだと思えた。
「これ」
座るなり、莉乃ちゃんが鞄の中から小さな紙袋を取り出した。
「なに?」
「もうすぐバレンタインやから」
頬を赤く染めながら、笑う。ああ、バレンタイン、ね? 本命は、オレ。そう思ってもいいのかな?
「ありがとう」
よろこんで受け取る。でも、顔には出さない。うれしいくせに、顔には出せない。
「寿彦さん、どんなのが好きかな? って迷った」
「どんなのでも、甘いものなら」
莉乃ちゃんのくれるものなら、なんでも好き。なんて、言えるわけがない。チラリとスカートに視線を送ると、寒そうに見えて立ち上がった。
「どうしたん?」
急に立ち上がったオレにつられて、莉乃ちゃんも立ち上がる。寒い中、おしゃれをしてくれたんだ。愛しくてギュッと抱きしめたい衝動に駆られながらも、ギリギリのところで平静を装った。
「寒いから、暖かいところに行こう?」
「ほな、マリンタワーに行きたい」
本当は高いところ、苦手だけれど。莉乃ちゃんの、小さな願いを叶えたくて「ああ」と返事をした。自分から握れない手が、オレの手をギュッと握ると、マリンタワーに向かって歩き始めた。
それだけでオレは、充分幸せだと思えた。