冬の恋、夏の愛
コスモクロック21は、大観覧車というだけあって、近くで見るとかなり大きい。思わず、足を止めた。

「どうしたん?」

「あ、いや……大きいなぁと思って」

高いところ、というだけでも緊張するのに、狭い個室にふたりっきり。理性を保てるのか不安になった。

「もしかして、高いところ苦手?」

「あ……」

あっさりと見抜かれてしまった。でも、乗りたいと言うのなら、乗らざるを得ない。

「高いところ苦手なら、やめとく?」

残念そうな顔でオレを見上げないでくれ。そんな顔をされたら、ますます乗らないわけにはいかない。

「大丈夫、乗れる」

外を見なければなんとかなる。そう思ってふみきった。

係員に案内されて、狭い個室に乗り込む。とりあえず、向かいに座ってみたけれど、莉乃ちゃんは不満げだ。

「隣、座ってもいい?」

断る理由はないけれど、距離が近すぎると、それはそれでまずい気もした。でも、莉乃ちゃんはイエスもノーもなく、オレの隣にドサッと座った。

「揺れる、揺れる」

これからどんどん高いところに行くドキドキと、顔が近すぎるドキドキで、口をへの字に曲げた。

「大丈夫やで? 私が隣にいてるから」

いやいや。あなたが近すぎるのは、大丈夫ではない。すぐ隣で笑う莉乃ちゃんを、まともに見ることができない。窓の外に視線を送ると、それはそれで怖くて、目のやり場に困った。

「寿彦さん」

「なに?」

呼ばれて視線を莉乃ちゃんに戻すと、目が合った。その目は、なにかを訴えているようにみえた。


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