冬の恋、夏の愛
「ホワイトデーに欲しいもの、ある?」

とりあえず、思いつきで話をした。観覧車はゆっくりと、いちばん高いところを目指していた。

「観覧車が、いちばん高いところに行ったら」

「うん」

「キス、して?」

驚きのあまり、息を飲んだ。莉乃ちゃんは、真顔でオレをみつめる。みつめあっているのは、ほんの数秒のはずなのに、とてつもなく長く感じた。

いよいよ、観覧車がいちばん高いところに到達しようとしている。莉乃ちゃんが目を閉じたのを合図にして、覚悟を決めた。

いい大人が、たかがキスだけで。そう思われるかもしれないけれど。莉乃ちゃんは、今までに付き合った女の子とは違う、特別な感情を抱いている人だから、たかがキスでも……では済まされない。

観覧車がいちばん高いところに到達した瞬間、そっと唇を重ねた。柔らかな唇が、オレの胸の鼓動を加速させた。

唇が離れると、莉乃ちゃんがゆっくりと目を開けた。照れ笑いを浮かべたあと、オレに抱きついた。

「寿彦さん、好き」

聞き間違いじゃなければ、莉乃ちゃんはそう言ったはずだ。

「うん」

小さく返事をすると、そっと髪をなでた。ずっとこうしていたいくらい、莉乃ちゃんが愛しくてたまらない。






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