冬の恋、夏の愛
莉乃ちゃんは、オレに視線を向けると、ううん、と、首を振った。

「じゃあ、どうしてここに?」

莉乃ちゃんの隣にドサッと座った。華奢な莉乃ちゃんは、風圧で飛んでしまいそうになっていた。

「クリスマスやから。寂しかった」

オレを待ってくれていたのか、こぼれ落ちる涙を、拭いもせずに答えた。

「キャンセルしなくてよかった」

指で莉乃ちゃんの涙を拭うと立ち上がり、手を差し伸べた。

「クリスマスディナーをしよう」

莉乃ちゃんは一時的な感情で、オレと別れてしまったようだ。好きな男ができたわけでも、オレに嫌気がさしたわけでもない。

オレなんかのことを、まだ好きでいてくれた……うれしくて、震える胸の内は隠して、ヘタクソなエスコートをした。そんなオレを、莉乃ちゃんは微笑んで受け入れてくれた。

「ごめん」

小さく、つぶやくように言うと、莉乃ちゃんは黙って強く手を握った。



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