冬の恋、夏の愛

煌めく夜景と、テーブルを賑わせる料理たち。どれもこれも贅沢すぎるくらいだけれど、莉乃ちゃんの誕生日に相応しい。

そっと優しくグラスを合わせると、莉乃ちゃんが今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「今日は、やけに泣き虫」

シャンパンをひと口飲むと、莉乃ちゃんをみつめてボソッとつぶやいた。

「だって……」

うつむくと、涙をポロポロと流した。いつも笑顔の莉乃ちゃんらしくない。

「せっかくの誕生日なのに、泣かないでよ」

そう。今日は、莉乃ちゃんの誕生日。大好きな莉乃ちゃんが生まれた日。涙を拭って顔をあげる莉乃ちゃんをみつめると、ポーカーフェイスもできず、微笑んだ。

その微笑みを見て、莉乃ちゃんが笑った。

「人の顔見て笑うなんて、失礼」

ボソッとつぶやくと、いつもの無表情に戻した。怒っているわけではない。ただ、急に恥ずかしくなっただけだ。