冬の恋、夏の愛
二月に入って早々、オレの狭い部屋で莉乃ちゃんと同棲を始めた。いらない物はできる限り処分したようで、少なくなった莉乃ちゃんの荷物を、部屋に運び込んだ。

「お疲れ様」

ひとまず落ち着くと、冷えたコーラで乾杯した。

「今日の晩ごはん、なにが食べたい?」

「なんでもいい」

莉乃ちゃんの作ってくれるものなら、何を食べてもおいしい。

「『なんでもいい』ってそれ、いちばん困る返事」

口を尖らせる莉乃ちゃんを突然、ぐいっとひっぱる。いっきに息がかかるくらいの距離まで接近する。

「莉乃ちゃん」

「え?」

「だから、莉乃ちゃん」

目を丸くする莉乃ちゃんの唇を早々に奪うと、ぎゅっと強く抱きしめる。

いかん、いかんと思いながらも、すぐそばにいると、制御不能になる。

「寿彦さん、好き」

小さくつぶやく莉乃ちゃんが、たまらなく愛しい。でも、そんなこと口にはできない。うれしいくせに今日も、ポーカーフェイスで「うん」と返事をするだけ。

それだけできっと、莉乃ちゃんには伝わっているはずだ。


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