冬の恋、夏の愛
③
そんな、細やかな幸せを手に入れたオレのもとに、一通のメールが届いた。
『お願いしたいことがあるから、会えない?』
メールの送り主は、仕事の関係で海外に住んでいた妹、聖子だった。夜、出歩くことになると、莉乃ちゃんに余計な心配をかけてしまう。そう思い、ランチタイムに会うことにした。
次の日、さっそく職場近くのそば屋で落ち合った。
「相変わらずだね。元気してた?」
明るく、快活で、姉御肌。聖子は、同じ日に、同じ腹から生まれたのが信じられないくらい、オレとは真逆の性格をしていた。
「まぁ、ね。ところで話って?」
この店の看板メニュー、天ぷらそばをふたつ注文してから、切り出した。
「あっちで知り合った彼と、結婚する」
「へぇー」
「『おめでとう』のひと言が先でしょ?」
フリーダムな聖子が、結婚。なんだか信じられなかった。
「『おめでとう』じゃなくて、『おめでた』なんじゃないかと思って、さ」
ボソリとつぶやくと、聖子の表情が強張った。どうやら図星のようだ。
「さすが。似てなくても双子」
「そんなことだと思ったよ」
なんだ。デキ婚か。呆れてものが言えなくなった。
「どうだっていいでしょ? 幸せならそれで」
「ん、まぁね」
オレなら絶対、莉乃ちゃんにそんなことはしないけれどな。そう思いながら、温かいお茶をすすった。
「それで、ね。結婚式のスピーチをお願いしたいの」
「へ?」
結婚式のスピーチ? オレが? 無理だよ、そんな大役。眉間にシワを寄せながら、間の抜けた返事をした。
「まぁ、今すぐじゃないよ? 六月」
「妊婦が、大丈夫なわけ?」
「だって、ジューンブライドに憧れているから」
注文していた天ぷらそばが運ばれてくると、聖子は長い髪をゴムで束ねて、勢いよくズルズルとすすった。なんともまぁ、男前な食べ方だな、と、感心する。
莉乃ちゃんなら、髪を耳にかけて、少しふうふうと冷ましながら、ゆっくり、チュルチュルと食べる。それがまた、かわいくていいんだけれど。
こんな男前な聖子を妊娠させた男は、どんなヤツなんだろうと気になった。
『お願いしたいことがあるから、会えない?』
メールの送り主は、仕事の関係で海外に住んでいた妹、聖子だった。夜、出歩くことになると、莉乃ちゃんに余計な心配をかけてしまう。そう思い、ランチタイムに会うことにした。
次の日、さっそく職場近くのそば屋で落ち合った。
「相変わらずだね。元気してた?」
明るく、快活で、姉御肌。聖子は、同じ日に、同じ腹から生まれたのが信じられないくらい、オレとは真逆の性格をしていた。
「まぁ、ね。ところで話って?」
この店の看板メニュー、天ぷらそばをふたつ注文してから、切り出した。
「あっちで知り合った彼と、結婚する」
「へぇー」
「『おめでとう』のひと言が先でしょ?」
フリーダムな聖子が、結婚。なんだか信じられなかった。
「『おめでとう』じゃなくて、『おめでた』なんじゃないかと思って、さ」
ボソリとつぶやくと、聖子の表情が強張った。どうやら図星のようだ。
「さすが。似てなくても双子」
「そんなことだと思ったよ」
なんだ。デキ婚か。呆れてものが言えなくなった。
「どうだっていいでしょ? 幸せならそれで」
「ん、まぁね」
オレなら絶対、莉乃ちゃんにそんなことはしないけれどな。そう思いながら、温かいお茶をすすった。
「それで、ね。結婚式のスピーチをお願いしたいの」
「へ?」
結婚式のスピーチ? オレが? 無理だよ、そんな大役。眉間にシワを寄せながら、間の抜けた返事をした。
「まぁ、今すぐじゃないよ? 六月」
「妊婦が、大丈夫なわけ?」
「だって、ジューンブライドに憧れているから」
注文していた天ぷらそばが運ばれてくると、聖子は長い髪をゴムで束ねて、勢いよくズルズルとすすった。なんともまぁ、男前な食べ方だな、と、感心する。
莉乃ちゃんなら、髪を耳にかけて、少しふうふうと冷ましながら、ゆっくり、チュルチュルと食べる。それがまた、かわいくていいんだけれど。
こんな男前な聖子を妊娠させた男は、どんなヤツなんだろうと気になった。