冬の恋、夏の愛
仕事を終えて、莉乃ちゃんより先に帰宅をすると、聖子からもらったバレンタインチョコの封を開けた。

『久しぶりに会えて、うれしかった』

一緒に添えられた小さな封筒には、メッセージが入っていた。このメッセージだけ読むと、莉乃ちゃんが誤解しそうだ。

そんなことを思っていると、ガチャガチャ、と、玄関の鍵を開ける音が聞こえてきた。

とりあえず、チョコレートが入った真っ赤な箱を、戸棚の奥へと追いやった。

「ただいま。ちょっと待ってね、ごはん作るから」

オレの姿を見て、慌てて食事の支度をしようとする莉乃ちゃんを、捕まえる。

「おかえり……」

慌てなくても、大丈夫だよ。

……なんて、優しい言葉をかけてあげられないから、後ろから抱きしめた。

「寿彦さん……」

ごはんは後で、ゆっくり作ればいい。今、この瞬間が大切なのだから。

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