冬の恋、夏の愛

冬を越えて春を迎えると、毎日が楽しくなる。三月は、プロ野球開幕。青空区役所、草野球チーム『青空スターズ』も活動が活発になる。

四月からは、近隣の草野球チームとの試合も組まれる。今日は、青空信用金庫の野球チームとの試合。久しぶりの試合に胸が躍った。

身体のキレもよく、三打数二安打。いい守備もでき、チームは快勝。自然と頬が緩んだ。

「寿彦、飲みに行くぞ」

チームが勝ったときは、行きつけの居酒屋『フルカウント』で飲むのがお決まりのパターン。シャワーを浴びて、着替えると、早く泡で喉を潤したくなった。

「お久しぶりです」

首には、ラッキーカラーであるピンクのタオルをかけたまま。それを慌ててリュックに押し入れた。

どうして、羽島さんがいるんだ? また、出張か? 来るなら来るって言えよ、涼介! 心の準備ができていない。

「関さん、莉乃、横浜に異動になったんです。横浜のこと、なにも知らないんで、よろしくお願いします」

なに? 横浜に異動!? 涼介の彼女である多治見穂花から突然、『よろしくお願いします』って言われても……。

曖昧にうなずくと、羽島さんは頬を赤く染めながらにっこりと微笑んだ。

オレは、この動揺を悟られないためにただただ無表情を決めこむことしかできなかった。




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