冬の恋、夏の愛
日曜日の夜、インターホンが来客を告げた。まさか、莉乃ちゃんがオレを心配して様子を見に来たのではないか? と、恐る恐る、ドアを開いた。

「寿彦、具合はどう?」

聖子だ。思わずドアを閉めようとした。

「ちょっと! せっかく来てやったのに、ドアを閉めるとか、どういうこと?」

元気な聖子に勢いよくドアを開けられると、遠慮なく上がりこまれた。

「熱は下がったけれど、インフルエンザだよ? うつるよ?」

「いいよ、うつっても!」

聖子はなんだか不機嫌だ。

「彼氏と、ケンカでも?」

「病人の面倒見に来てやったんだから、余計なこと言わないで」

……どうやら図星だったらしい。

「母さんが、病人のために晩ごはん作ってくれたから、食べて元気出しなよ」

「わざわざどうも」

そこは、ありがたくいただいた。

「でも、本気でうつるとまずいから、帰れよ?」

そう言ったにも関わらず、聖子はふたり分の晩ごはんを温めると、一緒に食べ始めた。さらには風呂を沸かし、泊まる気でいるようだ。

「彼氏に誤解されるよ?」

「誤解でもなんでもすればいいわ」

ケンカの原因はわからないけれど、赤ん坊のためにも仲直りしてくれよ。文句を言うわりには、世話を焼きたがる聖子のことだから、赤ん坊の世話も問題ないとは思うけれど……。



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