冬の恋、夏の愛

莉乃ちゃんと別居を始めてから、一週間が過ぎた。体調もすっかり良くなり、多治見さんに預けていた莉乃ちゃんを迎えに来た。

莉乃ちゃんには、内緒で。

「ただいま」

多治見さんの声と、玄関のドアを開ける音が聞こえた。

「おかえり」

先に部屋で待っていた涼介が出迎えた。

「どうしたの?」

涼介の顔に何か書いてあることに気づいたのか、多治見さんが聞いた。アイツのことだ。きっと必要以上にニヤついていたに違いない。

「おかえり」

そんな涼介とは対照的に、オレはソファに座ったまま、相変わらずの無表情で言った。久しぶりに莉乃ちゃんに会えて、すごくうれしいくせに。

でも、莉乃ちゃんはそうではないようだ。オレを見るなり、後ずさりをした。

「羽島さん、そのリアクションはどうかと思うよ?」

笑いながら涼介が言った。いるはずのないオレがいて、驚きのあまりそのリアクションをしたのか? それとも、別の理由が……。

……なんて。考えるのはよそう。オレはただただ、莉乃ちゃんに会えたことがうれしいのだから。


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