冬の恋、夏の愛
涼介の運転で、食事に出かけた。後部座席に、莉乃ちゃんと並んで座った。久しぶりに並んで座ると、なんだか緊張する。

「なにか食べたいものは?」

「私はなんでもいいよ。おふたりさんは?」

涼介カップルがオレたちに気を遣ってくれた。

「なににしようかな? 昨日はなに、食べたっけ?」

「昨日は、カレーだったよね? 関さんは、なにを食べました?」

「ラーメン」

しかも、カップラーメン。だから、今日は何を食べてもごちそうになる。

「ラーメンとカレーは無しで。どうしようかな? 寿彦の快気祝いってことで、焼肉でも食うか!」

「いいね」

涼介の意見に乗っかると、車は焼肉屋を目指した。

焼肉屋につくなり、涼介が景気良くドンドンと注文してくれた。

「羽島さん、すごい食べるね。そんなに寿彦と会えたのがうれしいの?」

思わず涼介がつっこむほど、莉乃ちゃんの食欲がすごい。もしかしてこの一週間、オレを心配して食欲がなかった、とか?

「太るよ?」

そんなことを聞けるわけもなく、イヤミのようにボソッとつぶやいた。

「食べやな、やってられん」

小さな声で返ってきた返事は、意外だった。なんだか、不機嫌に思えたから。

「まぁ、抱き心地はよくなる……か」

涼介カップルの隣で、寂しい思いをしていたに違いない。太っても痩せても、莉乃ちゃんにはかわりない。むしろ、もう少し肉がついていたほうが、心地がいいかもしれない。

「んっ!」

オレの返事も意外だったのか、莉乃ちゃんが目を丸くした。

「ほどほどにしなよ」

「すごい煙やなぁ。目ぇ痛いわ」

オレの言葉が聞こえなかったのか、莉乃ちゃんがオーバーな手つきで煙を払った。


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