冬の恋、夏の愛
「関さん、素敵でした」

羽島さんに言われると、悪い気はしない。でも、野球をしている姿がカッコよく見えるだけで。実際、素敵には程遠い。

「……だよね? 寿彦、野球をしているときは、ホントカッコいい。こんなだけれど、いいヤツだから。仲良くしてやって?」

涼介、余計なお世話だ。羽島さんにだって、選ぶ権利がある。なにが楽しくてこのオレと、仲良くしなくちゃいけないんだ。

「はい!」

涼介の言うことに、素直に返事をするのは、かわいい。でも、無理はしないでくれ。かえって迷惑だよ。

「今度、ハマスタにでも連れていってやりなよ?」

だーかーら! 余計なお世話。羽島さんにだって、選ぶ権利が……。

「ぜひ、お願いします! 連絡先、交換してもらってもいいですか?」

マジか? もの好きもいるもんだ。ほんの少しドキドキする気持ちを、ポーカーフェイスで隠しながら、スマホを用意した。

「待ち受けも野球なんですね」

「……まぁ、」

野球が好きだから。人と接するのは苦手だけれど、野球を通せばなんだってできる。チームワークも、知らない観客とのハイタッチも。

サクサクッと連絡先を交換した。まさか、会って二回目で連絡先を交換できるだなんて。

友だちの彼氏の友だちだから、無下にはできないし、な。連絡先を交換したところで、オレから連絡しなければ、なんの進展もないんだろう、きっと。

オレから連絡するつもりはないし、ビールの泡のようにすぐ消えるだろう。羽島さんの中から、関寿彦って男は。



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