冬の恋、夏の愛
休み明けは、ドタバタと忙しい。オレは総務部で、職員の給与計算や福利厚生に関わる業務をしているから、区民から直接苦情を言われたりしないけれど。混み合う窓口は大変だな……と思いながら、パソコンと向き合う。

一方、涼介は、広報の業務をしているから、常に動き回っている感じだ。自分には向いていない。

ランチタイムを終え、そろそろデスクに戻ろうとしたとき、珍しく携帯が鳴った。意外な人物からの電話に、出るのを少しためらった。

「はい。関ですが」

『こんにちは。加茂です』

相手は、流星区役所の草野球チーム『流星サンダーズ』のエース、加茂さんだった。どうしてこんな時間に? 何の用だ? とは聞けずに、挨拶を返した。

『今、先ほど、莉乃ちゃんと食事をしてきました』

「……は?」

『羽島莉乃ちゃん。あなたの、彼女のことですよ?』

突然、電話をしてきたかと思ったら……急に何を言い出すんだ?

「ああ。仕事ですよね? 彼女の会社、流星区にありますから」

冷静を装い、切り返す。心中、穏やかではないが。

『プライベートで誘ったら、すぐに区役所の近くまで来てくれましたよ? 商店街にサンマー麺で有名な店があって』

「そうですか。申し訳ないんですが、昼休みが終わりましたので、失礼します」

そう言って半強制的に会話を終了した。

……なんだよ、莉乃ちゃん。どういうつもりで加茂さんと……。加茂さんも、どういうつもりでそんな電話を……。

ふぅ、と大きなため息をつくと、携帯をかばんに放り込んで、ガチャンとロッカーを閉めた。

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