冬の恋、夏の愛

そう思っていたのに、おかしな展開になっている。

『ハマスタに行ってみたい』
『マリンタワーにのぼりたい』
『江ノ電に乗ってみたい』

好奇心旺盛な羽島さんは、横浜のみならず、神奈川県のいろいろな名所に行きたいとオレを誘うのだ。

羽島さん、横浜に知り合いが少なくてよっぽど寂しいんだろうな。オレなんかを誘うなんて。

今日も、赤レンガ倉庫に行ってみたいと言うから、断る理由もなく、現地集合。不思議なことに羽島さんは、毎回、行きたい場所に現地集合したがる。それで、道に迷って集合時間に遅れる。

今日もそんな感じで、十五分ほど待ちぼうけ。

「関さん! 遅れてごめんなさい」

はぁはぁと、息を切らせて駆け寄ってきた。別に急いでいないから、走らなくても。

「現地集合、やめたら?」

ふたりで会うのは、今日で四度目。なんやかんやで毎回謝らせてしまうから、なんだか気の毒に思えて、そう言った。

「ごめんなさい。怒っていますよね?」

整わない息のまま、申し訳なさそうに小さく言った、羽島さん。

「いや。別に」

怒る理由なんてない。初めての場所だから、下調べをしていても迷うことだってある。

「とりあえず、入る?」

今日は、風が強く吹いている。羽島さんのふんわりとしたスカートが、風にいたずらされるのを嫌った。

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