冬の恋、夏の愛

涼介は何も言わず、オレを一晩泊めてくれた。

「今日は、帰れよ」

朝、区役所の近くの喫茶店でモーニングを食べていると、涼介が言った。

「子どもみたいに拗ねていないで。会って、きちんと話せよ?」

「……わかった」

「ヨシ。じゃあ、四人でメシ、行こう。穂花に連絡しておく」

四人でメシの後は、別れ話か。まずは、莉乃ちゃんの話を聞こう。どういうつもりで加茂さんと食事に行ったのか。オレに愛想をつかしたのか、それとも加茂さんを好きになったのか。

聞きたいことは山ほどある。うまく聞き出せるかはわからないけれど、莉乃ちゃんには嘘をついてほしくない。

別れるなら、別れる、で。すべて正直に話してほしいと思った。

「寿彦、トーストが硬くなるよ? 早く食べなよ」

目の前には、手をつけられないモーニングプレートが、早く食べてよと言わんばかりに並んでいた。

「うん……いただきます」

トーストをひと口食べると、涼介が苦笑いをした。

「オマエ、よっぽど莉乃ちゃんに惚れているんだな」

「……別に」

小さな声で少し抵抗するオレを、涼介は鼻で笑った。

「けんかか浮気か知らないけれど、へこみっぷりが半端ないよ?」

そう言われると、返す言葉がなかった。


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