冬の恋、夏の愛
そんなオレを、監督は最後まで試合に出してくれた。監督の期待に応えるべく、いつものプレーを心がけた。

「涼介、寿彦を病院に連れて行って」

試合が終わるとすぐ、監督はそう言った。監督の言うことは聞かなくても、涼介の言うことなら聞く。監督は、そう思ったに違いない。

涼介も快く引き受けると、シャワーと着替えをすませ、オレのために休日診療を探して、病院に連れて行ってくれた。

診察の結果は、聞かなくてもわかった。死球を受けたことは何度かあるから、単なる打撲でこんなにも痛みが長引くとは思えなかったからだ。

処置をしてもらい、涼介の車で家まで送ってもらった。帰りが遅いオレを、莉乃ちゃんが外で待っていてくれた。

「おかえり」と、大きく手を振る莉乃ちゃん。大げさに巻かれた左手がなんとなく気まずくて、小さく「ただいま」を言った。

「左手、どうしたん?」

莉乃ちゃんはすぐに気がついて、心配そうに眉をひそめた。

「……ボールをぶつけて。念のため、湿布貼って巻いてる……」

「大丈夫? 痛い?」

「……それより、お腹空いた」

莉乃ちゃんには、絶対に言わない。弱音なんて吐かない。話をすりかえるようにして、返事をした。

「わかった。すぐ用意する」

オレの返事に、莉乃ちゃんは安心したような笑顔を見せた。


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