冬の恋、夏の愛
その結果、バックスクリーンに直撃するホームランになった。ダイアモンドをゆっくりと一周するオレに、笑顔はなかった。そう、まだ勝ったわけではなく、あくまで振り出しに戻しただけだ。

九回表は、この一点を返すのが精いっぱいで、九回裏に入った。

流星サンダーズの攻撃。青空スターズの抑えは、山県克樹。ひとり、ふたりと連続三振に抑えた。

この調子であとひとり抑えれば、延長戦に突入する。そのプレッシャーなのか、なかなかストライクが決まらず、スリーボール、ノーストライクと追い込まれた。

四球目。カキーンという快音とともに、フェンス直撃のスリーベースヒットになった。

こんなときに、迎えるバッターは加茂さん……。マウンドに選手たちが集まり、ピッチャーに声をかけると、自分たちの持ち場に戻った。

一球目はストライク、二球目はファールで、加茂さんを追い込んだ。

三球目に、加茂さんが捉えた。鋭い当たりでオレのグラブを弾くと、レフト方向へと転がっていった。

その間に、三塁ランナーが生還し、流星サンダーズがさよなら勝ちをおさめた。

あっけない、ゲームセット。

「ああ……」

ため息のような声が漏れた。加茂さんの鋭い当たりを捕らえられなかったオレは、空を仰いで倒れたまま、しばらく動けなかった。

雲の切れ間から、青空がのぞく。試合には負けたけれど、なんだか清々しい。ゆっくりと立ち上がると、中央に集まり、一礼をした。

スタンドからは、両チームの選手たちに惜しみない拍手が送られた。拍手を受けながら、うつむき加減で、ベンチに引き上げていった。

< 91 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop