冬の恋、夏の愛

六月の湿気を含んだ風が、身体にまとわりつく。ほんの少し見えていた青空は、雲に覆われてまた姿が見えなくなった。

「お疲れ様」

グラウンドの外で、莉乃ちゃんが待っていた。一生懸命、笑顔を作ろうとすればするほど、崩れていく。

「なに不細工な顔、してんの?」

そんな顔を見せられたら、泣きそうになるよ。ぶっきらぼうな言い方で、ポーカーフェイスを保った。

「ごめん、勝てなかった」

莉乃ちゃんは、ブンブンとオーバーなくらいに首を横に振った。

「お疲れ様」

そんなふたりのそばに、加茂さんが近づいてきた。莉乃ちゃんはうつむき、オレはまっすぐに加茂さんをみつめた。

「いやぁ、惜しかったね。青空スターズ」

上から目線で嫌味のように言われたけれど、反論の余地はなかった。

「僅差だろうが、大差だろうが、負けは負けです」

低い、小さな声で言うことしかできない。

「約束、守ってくれる?」

莉乃ちゃんの視線を、痛いほど感じた。

「約束は……約束ですから……」

もともと小さな声が、さらにトーンを下げると、突然、加茂さんがゲラゲラと笑いだした。わけがわからず、ふたり、顔を見合わせた。

「関さんは指を骨折しながらホームラン打つし、莉乃ちゃんはマウンドに届くくらいの大声で応援するし。ふたりとも、バカ正直すぎる!」

「骨折!?」

加茂さんの言葉に莉乃ちゃんが反応すると、ついムスッとした顔になり、ため息をついた。加茂さん、何も今、ここで言わなくても……。

「そう。骨折した指で、オレの打球なんて取れないのに。どこまで野球バカなんだよ?」

「オレには野球しかありませんから。煮るなり焼くなり、お好きにどうぞ」

そう答えると、莉乃ちゃんの背中を押して、加茂さんの前に突き出した。オレたちは真剣なのに、加茂さんがまた笑った。

「そんなにムキになられても。ちょっとからかっただけなのに」

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