冬の恋、夏の愛
「からかう……って?」

ふたりして、ぽかんと口を開けると、加茂さんに視線を送った。

「ナイスゲームでした!」

加茂さんはそう言い残して、ぽかんとするふたりを置いて、球場をあとにした。

「ナイスゲーム! やってさ……」

莉乃ちゃんがそうつぶやくと、なんだかおかしくなって、ふたりで笑った。

「それより寿彦さん! 骨折ってホンマなん?」

こんな形でバレるなんて……。恥ずかしくてたまらない。イエスもノーも言わず、しかめっ面をした。

「それで野球とか、寿彦さんはどんなけ野球バカなんよ?」

莉乃ちゃんは、笑いながら泣いていた。

「気づいてあげられなくて、ごめん」

「『ごめん』って言われても、痛いもんは痛い」

照れ隠しにブツブツとつぶやくと、骨折していない方の手で、莉乃ちゃんの手を握った。

「帰ろ? 我が家に」

「うん」

莉乃ちゃんが大きくうなずくと、肩を並べて歩いた。雲が切れ、ほんの少しの青空が、ふたりを明るく包んだ。


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