婚約指環は手錠の代わり!?
「付き合ってないよ。
だって、私は海瀬課長の彼女じゃないんだもん」

涙はぼろぼろ零れ落ち続ける。
いつもは心の中にしまって口にしない、言葉と一緒に。

「海瀬課長が云ったんだもん。
私は彼女じゃないって」

「ひでーな」

顔を苦々しげにしかめると、涼太はグラスに残ったビールを煽った。

「朱璃、俺と付き合えよ。
俺は朱璃をこんな風に泣かせたりしないから」

「涼太と、付き合う……?」

急に目の前に出てきた選択肢。
驚きすぎて涙は止まり、きょとんとして涼太の顔を見てしまう。

「そ。俺と」

私を見つめる涼太は、顔は笑ってるけど目の奥は笑ってない。
一気に、酔いが醒めていく。
涼太と付き合えば、きっとこんな苦しい思いはしなくていい。

でも。

「ありがと、涼太」
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