婚約指環は手錠の代わり!?
「なにが違うんだ?」

乱暴な運転。
恐怖で身体ががたがた震える。

そうだ、違わない。
私が涼太とふたりだけで飲みに行ったりするから。

「早く仕事が片づいたから、予定を繰り上げて帰ってくればこれだ」

はっ、吐き捨てるように笑われて、ただ俯いて唇を噛んでいた。

 
部屋の玄関を入ったとたん、両手首を壁に押さえつけられた。
そのまま、唇が重なる。
いつものキスとは違い、呼吸さえも奪ってしまうほどの暴力的なキス。

「酒臭い」

「いたっ」

唇が離れたと思ったら、歯形が残るほど強く、首筋に噛みつかれた。

「いくつ約束を破れば気が済むんだ」

ぎりぎりと顎を掴む手が痛い。
感情の見えない、レンズの奥の冷え切った瞳。

「朱璃は僕が嫌いなんだろ」
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