婚約指環は手錠の代わり!?
たった一言、その言葉が喉で引っかかって出てこない。
それに、こんな風に云わされるのはフェアじゃない。

「だから、嫌いじゃないです」

「だから?」

ぎり、唇を噛んだってずっとただ見てるだけ。
前は、傷が付くって怒ってたのに。

「嫌いじゃない、から……」

とうとう、涙がぼろぼろとこぼれ落ちだした。
そんな私に海瀬課長ははぁっ、小さくため息をついた。

「じゃあ、仕方ない」

「えっ、まっ……!」

私の制止なんか聞かずに、ばたんとドアが閉まって海瀬課長はいなくなった。

「海瀬課長!
海瀬課長!
海瀬課長!」

パニックになって呼び続けたって返事はない。

「ふぇ、ふぇーん」

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