婚約指環は手錠の代わり!?
どうしていいのかわからなくてひたすら泣き続ける。
そのうち疲れて……眠ってしまった。


 
優しい手が私の髪を撫でる。

「どうしたら朱璃は、僕だけのものになるんだろうな」

……僕だけのもの、って?

私はこんなに、海瀬課長が好きなのに。
私は、海瀬課長だけの私になりたいのに。

なのに、海瀬課長は私だけの海瀬課長になってくれないから。

「まあ、僕が云わないから悪いんだが」

はぁっ、小さく、ため息の音。
鼻腔に入ってくる、煙草の香り。

「……海瀬、かちょ……?」

「ああ、目が覚めたのか」

そっと瞼を開くと、海瀬課長は灰皿で煙草をもみ消し、眼鏡の奥の目を泣き出しそうに歪ませた。

「海瀬、かちょお。
ひっく」


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