婚約指環は手錠の代わり!?
言葉にしようとするのに、うまく唇に乗らない。
きっと、罰が当たったんだ。
ずっと素直に、気持ちを云わなかったから。

「いいよ、いまは」

まぶしそうに目を細めると、海瀬課長の唇に笑みが乗った。
まばたきすると云えなかった言葉が涙になったかのようにぽろりと落ちた。

海瀬課長が頬を撫で、また唇が重なる。
そのまま、波に溺れていった。
今日は心地いい眠りに沈んでいく。

「おやすみ、僕の朱璃」

優しい、煙草の香りのキスを最後に穏やかに眠りに落ちた。



「朱璃」

会社で廊下を歩いていたら、向こうから涼太がやってきた。
一昨日のことがあるから、つい距離をとってしまう。

「昨日、休んでたみたいだけど」

「あ、うん。
……風邪、ひいて」

云えない、本気で海瀬課長に監禁されてたなんて。
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