婚約指環は手錠の代わり!?
イライラと、さっきまでケーキの載った、お皿のあった位置を、海瀬課長の長い指がトントンと叩く。
それが、どうした?

「……うまくいかなくて練習してんだ」

ふいっと逸れた視線。
赤くなった頬。

……あれって、海瀬課長の手作りだったんだ。
嬉しい、だけど。

「……彼女じゃないって」

「は?
彼女なんて言葉じゃ足りないくらい愛してるんだから、彼女じゃないだろ」

「なんですか、それ」

おかしくて笑いが込みあがってくる。
それに、さっきから海瀬課長の顔は真っ赤かで。

「あ、それ、このあいだの手錠代わりだからな。
その指環が嫌なら、また手錠で繋ぐが?」

「そんなー」

にやり、あがる右の口端。
ああ、あれはもしかして、皮肉ってるんじゃなくて、照れてる?
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