婚約指環は手錠の代わり!?
「ほ、ほんとの話じゃないですか。
まだ未練があるから、俺のこと、本気にしてくれないし。
でも、海瀬課長が芹口さんと結婚するなら、俺、がんがんいかせてもらいますから」

新橋さんに怯んだ高見さんだったが、すぐにぐっと強い力で、眼鏡の奥から睨み返した。

ふと思ったけど、最近、眼鏡を海瀬課長に似たタイプの銀縁眼鏡に変えたのは、そういう理由だったんだろうか。

……はぁーっ、珍しく新橋さんの口から落ちる、深いため息。

「高見くんに云われると腹立たしいけど。
海瀬くんに未練があったのは認める。
でも、芹口さんのことは心の底から祝福してるから。
おめでとう」

「ありがとうございます」

いつもの、どこか人をからかうような笑顔とは違い、心からの新橋さんの笑顔に嬉しくなった。

「あーあ。
私も新しい恋、見つけないとな」

「だから俺が、って」

「それはない」
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