婚約指環は手錠の代わり!?
私が最後のコーヒーを流し込んでいるあいだに、海瀬課長はネクタイを締め、ジャケットを羽織った。

 
私を気にせずに足早に歩く海瀬課長のあとを追う。
マンションを出て徒歩五分で地下鉄。
立地条件、いいなー。
しかも、乗って十分かからず会社の最寄り駅。
うらやましいとしかいいようがない。


 
出社すると、じろりと武本さんに睨まれた。

「昨日はどちらにお泊まり?」

「えっと……」

昨日と同じ服で出社すれば、外泊だったことはバレバレで。
けど、海瀬課長の家に泊まったとは云えなくて、なんとなく口を濁してしまう。

「色気仕掛けというわけ?」

「は?」

完全に見下して私を見ているが。

……なにそれ?
いまでなに云われても黙ってたけどさ。
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