婚約指環は手錠の代わり!?
皆さんちゃんと、気にしてくださってたんだ。


「芹口さん」

給湯室で自分のお茶を入れていたら、声をかけられた。
振り返ると微妙な感じで高見さんが笑ってる。

「武本さんじゃないけど、その、昨日結局、」

「もしかして昨日、私、寝落ちる以外になにかやらかしましたか?」

海瀬課長はもう酒は飲むなと云っただけで、私がなにをやったのかは具体的に教えてくれなかった。
寝落ちる以外にもなにか、やらかしたんだろうか?

「いや、三杯目飲み干したとたん、ぱたんと寝ちゃっただけだから。
……下世話だとは思うけど、やっぱり気になるし」

苦笑いの高見さんに思わず笑いが漏れる。
やっぱり気になりますよね、一緒に出勤してきたら。

「気がついたら地下鉄もバスも終わってる時間で。
課長のお宅に泊めていただきました。
それだけ、です」

「なら、よかった」

高見さんが笑うと、べっ甲調の上部の少し太い眼鏡と相まって子供っぽく見えた。
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