婚約指環は手錠の代わり!?
がちがち震えてる私をあざ笑うようにカチッとなにかのはまる小さな音がしたあと、ガチャッとドアが開いた。
でも、ガツッとチェーンで止まったみたいだ。

……お願いだから、帰って。

でも願いは虚しく、隙間から差し込まれた手が、いとも簡単にチェーンを外してしまう。

「朱璃、帰るぞ」

「ふぇ、ふぇーん」

入ってきた海瀬課長にほっとするやら腹立たしいやらで涙があふれてきた。

「なんだ?」

「どんだけ怖かったと思ってるんですかー」

どんどん胸を叩いたって、ぜんぜん応えてない。
それどころかおでこにちゅっとキスされた。

「だから云っただろ?
こんな鍵かけたって無駄だって」

「それとこれとは話が別ですー」

私は泣いてるっていうのに、おでこに、頬に、つむじに、海瀬課長はキスしてくる。
悔しいけど、それでなんか安心して気持ちが落ちついてきた。
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