婚約指環は手錠の代わり!?
「え……」

右頬だけを歪ませて海瀬課長が笑う。
さっきまでいつも通りだったのに、ベッドに入ったとたんひとりにされた。

……返って清々するし。
広いベッドを独占できて最高。

などと強がってみたものの。

眠れない。
小さな物音でさっきの恐怖を思い出し、身が竦む。

「ふぇ、ふぇーん」

とうとう耐えられなくなって、涙がぽろぽろ落ちてきた。

「どうした?」

「海瀬かちょー」

寝室に入ってきた海瀬課長にぎゅーっと抱きついて子供みたいに泣く。
そんな私の髪を撫でる海瀬課長の手は優しい。

「朱璃はひとりがいいんだろ?」

「今日はひとり、嫌ですー」

はぁっ、あきれたように小さくため息をつくと、一緒のベッドに入って後ろからぎゅーっと抱きしめてくれた。
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