婚約指環は手錠の代わり!?
心配そうな新橋さんの声に我に返った。
海瀬課長も食事の手を止めて私を見てる。
感情の読めない、冷たい顔。

「えっと……。
ストッキング、伝線してるの気になってて。
やっぱりコンビニ、行ってきますね」

嘘。
伝線なんてしてない。
でも、いまは海瀬課長の顔を見たくない。

「僕も……」

「海瀬くんはダメー。
芹口さん、いってらっしゃい」

にっこりと笑った新橋さんに、小さくあたまを下げて逃げるように食堂を出て行く。

……私は海瀬課長の彼女じゃないって。
なら、私はいったい、なんなんだろう?
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