婚約指環は手錠の代わり!?
私が見ていることに気づくと、誤魔化すようにふふっと笑う。

「海瀬課長が悪い人じゃないとか嘘ですよー。
俺、今朝もまた、めっちゃ怒られましたもん」

「高見くんは海瀬くんに怒られるようなことするからでしょ?」

笑いながらも軽くあしらわれて、高見さんがみるみるうちに落ち込んでいく。
そんな光景に笑いながら。

……ほんとに海瀬課長と新橋さんって、ただの同僚なんだろうかと引っかかってた。

 
予定より遅く外回りから帰ってきた海瀬課長と事務所を出たところで会った。

「朱璃」

にこりともしない顔で私の腰を抱き寄せ、右手が顎にかかる。
毎回の行動でほぼ条件反射で目を閉じると、唇からなにかを押し込まれた。

「……なんですか、これ」

瞼を開けるとレンズ越しにあった目が細くなる。

甘い、カカオの香り。

噛んでいいのか悩んでしまう。
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