冷たい雨の降る夜だから
 呆れた表情の先生に怒られたのは、もう寝るだけになった頃。きっかけは、お風呂から上がってきた先生から私が思いっきり目を逸らしてしまったから。

「あのなぁ。意識しすぎなんだよ。そんなにされるとこっちまで意識するわっ」

「ごめんなさい……」

 怒られても当然といえば当然。私は、先生の部屋に帰ってきてから一度も先生の顔をまともに見れていなかった。それはもちろん、昨日を思い出してというのもあるけれど、理由はそれだけじゃない。

 藍が化粧水入れておいたと言っていたので、化粧水をさがしたら、しっかり避妊具まで入っていたのだ。

 あの子ってば、あの子ってば、あの子ってば!!! ほんとにもうっ 

 先生がお風呂に入っている間に何考えてるの! とメッセージを送ったら、全く詫びれていない返事が届いた。

『あげるから一個くらい持っときなよ。あと、もう遅いかもだけど、ピル飲んでるのすぐには言わないほうがいいよ。そういうの知ると一気に適当になる男もいるから』

 “そう言うのを知ったら適当になる男”その言葉が目に入った途端に、心の奥が一気に熱を失った。きっと先輩は、そういうタイプの人だったのだろうと思い至ったから。

 藍は、今飲んでいる途中のピルのシートもちゃんと入れてくれていた。本当に実に優秀な妹だ。お泊りの準備にかけては。じっと今飲んでいるピルのシートを見つめる。今日飲むのが14番。丁度半分飲んであることになる。私の周期では、26番を飲む日に生理が来る。
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