冷たい雨の降る夜だから
「さ、寝るかな。お前ベッドで寝な」

 思わず見上げると、先生は視線でソファを指す。

「俺は、こっちで寝るから」

「え、でも……」

「一緒に寝んの、お前怖いだろ」

 そんなこと無い、そう言いたいのに昨日を思い出すと不安になってしまう。だけど、先生に抱きしめてもらうのは凄く好きで、キスするのも好き。昨日だって、あのまま先生に導かれるままに最後まで出来るんじゃないかとすら思ったのに。

「先生」

「ん?」

「ぎゅうってしてくれる?」

 そう尋ねると、軽く抱き寄せられられた。そのまま、先生の背中に腕を回してぎゅうとしがみつくと、頬を摺り寄せた先生の胸から聞こえる鼓動がいつもより少し早いのが判る。

 先生も緊張してたりするのかな? 先生はいつも余裕そうに見えていたから、なんだか可笑しくてふふっと小さく笑う。

 やっぱり、好き。大好き。

「朝までこうしてられる?」

「朝まで、こうしてたい?」

 耳元で低く響いた優しい声に、先生の腕の中で頷いた。

「何もしないから、一緒に寝ようか」

 先生の言葉に答える代わりに、ぎゅうっと先生にしがみついた。

 先生は、約束通り何もしなかった。

 ただ私のことをずっと、朝までずっと、抱きしめていてくれた。
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