冷たい雨の降る夜だから
『何度も言ってるだろ、たまたま前のヤツが最低だっただけだって』
飲み会を一次会で切り上げて、駅構内のコーヒーショップの前を足早に通り過ぎる。しとしと降る雨と漂うコーヒーの香りに思い出すのは、先生に昔何度となく言われた言葉。
「先生の嘘つき」
ぽつりと唇から零れ落ちた言葉は、駅の雑踏に呑まれて消えていく。私にとって男の人は、7年前から恐怖の対象になってしまった。それはいまだに変わらない。先輩と他の男の人が違うなんてことも、思えていなかった。
元々わいわいして賑やかなのが好きで、中学も高校も比較的男子とも仲が良いグループに居た。先輩の事があってからは、あんな経験をみんなに知られるのが嫌で空元気でやり過ごした。高校の頃は既に1年間一緒に過ごしていた仲間だったから何とかやり過ごせたけれど、知らない人だらけの大学は、私にとって凄く怖いところだった。
女子大に行かなかったことを本気で後悔した。
新入生歓迎と謳った上級生が開催する飲み会は、隙あらば隣に見知らぬ男の人が座ってくるし、遠慮も何もなく触れてこようとする。怖くてたまらなくて、飲み会には極力行かないようにした。
社会人は、大学生の飲み会ほど無法地帯じゃない。2人きりでなければそれなりにやり過ごせるようになったから、随分マシになったと自分では思っている。
それでもやっぱり、踏み込まれるとダメなのだ。
しとしとと止まない雨の中を歩いているうちに、酔いは完全に冷めていた。その分、雨の音に呼び起される記憶に容赦なく引き込まれてしまう。家の近くのコンビニの前の信号待ちをしながら、溜息をついて目を伏せると、じわりと涙が目に沁みた。雨で濡れた世界は、悲しくなるほどにキラキラと光を反射する。
コンビニの向かいの公園の近くの街灯の下に、いつも黒い車を探してしまう。同じ車種を見かけると、反射的にナンバーを見てしまう。
先生に送ってもらう時は、いつもこの公園の前までだった。
飲み会を一次会で切り上げて、駅構内のコーヒーショップの前を足早に通り過ぎる。しとしと降る雨と漂うコーヒーの香りに思い出すのは、先生に昔何度となく言われた言葉。
「先生の嘘つき」
ぽつりと唇から零れ落ちた言葉は、駅の雑踏に呑まれて消えていく。私にとって男の人は、7年前から恐怖の対象になってしまった。それはいまだに変わらない。先輩と他の男の人が違うなんてことも、思えていなかった。
元々わいわいして賑やかなのが好きで、中学も高校も比較的男子とも仲が良いグループに居た。先輩の事があってからは、あんな経験をみんなに知られるのが嫌で空元気でやり過ごした。高校の頃は既に1年間一緒に過ごしていた仲間だったから何とかやり過ごせたけれど、知らない人だらけの大学は、私にとって凄く怖いところだった。
女子大に行かなかったことを本気で後悔した。
新入生歓迎と謳った上級生が開催する飲み会は、隙あらば隣に見知らぬ男の人が座ってくるし、遠慮も何もなく触れてこようとする。怖くてたまらなくて、飲み会には極力行かないようにした。
社会人は、大学生の飲み会ほど無法地帯じゃない。2人きりでなければそれなりにやり過ごせるようになったから、随分マシになったと自分では思っている。
それでもやっぱり、踏み込まれるとダメなのだ。
しとしとと止まない雨の中を歩いているうちに、酔いは完全に冷めていた。その分、雨の音に呼び起される記憶に容赦なく引き込まれてしまう。家の近くのコンビニの前の信号待ちをしながら、溜息をついて目を伏せると、じわりと涙が目に沁みた。雨で濡れた世界は、悲しくなるほどにキラキラと光を反射する。
コンビニの向かいの公園の近くの街灯の下に、いつも黒い車を探してしまう。同じ車種を見かけると、反射的にナンバーを見てしまう。
先生に送ってもらう時は、いつもこの公園の前までだった。