冷たい雨の降る夜だから
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駅の階段を下りてロータリーに向かうと、見慣れた先生の車が停まっていた。助手席側のドアを開けて乗り込むと、先生がちょっと微妙そうに首を傾げた。
「なんかまだ見慣れないな。その髪」
苦笑交じりの先生の言葉に、視界の上の方に入っている前髪をそっと指先でつまんでみる。先週末、ふと思い立ってバッサリと髪を切った。更にカラーもして、軽くパーマもかけて、私としては、着たかった服を着るのがもっと楽しくなった。
ずっと黒髪ロングだったのを急にショートにして、カラーもしたものだから会社では散々二度見されたし、返事をしても気づいてもらえなかったりもしたけれど、少なくとも同期の女の子達には可愛いと言ってもらえた。肝心の先生は、何も言ってくれないけれど。
「そんなに似合わない?」
「いや、んなことないよ。つーか、その髪あれっぽいんだよな。んーと……あれ」
「あれって言って出てこないの、歳なんだよ」
「うるせぇな。しばくぞ」
舌打ちした先生に睨まれるけれど、先生はちゃんと加減してくれるのを知ってるから、怖くは無い。
「あぁ、思い出した。あれだよ、トイプードル」
「それ、犬じゃん」
「お前、犬よりは猫っぽいよな」
何それ、と拗ねた私を他所に、先生はくしゃくしゃと私の髪を撫でて笑う。可愛いとか、似合うとか、他に言うこと沢山あるじゃん、と口を尖らせてしまう。
そんな会話をしながらも、先生と会って緊張の糸が切れたのか一気に眠気が押し寄せてくる。仕事を終えた疲れもあったけれど、ここ最近あまりよく眠れていなかったのもあって、車の揺れが少し心地よい。
「昨夜も全然寝れなかった」
「大丈夫だよ。友達だろ?」
先生の言葉に頷いたものの、漠然とした不安は簡単に消えてはくれない。
明日、ほぼ5年ぶりに美咲と圭ちゃんに会う。自分から会いたいと連絡したくせに、いざ会うとなったら凄く不安で、夜に何度も目を覚ますようになってしまった。あまりにも寝不足なので今日は先生の所に泊めてもらう。先生の傍なら、きっと安心して眠れるから。
「眠かったら寝てていいぞ」
「やだ。頑張る」
先生の家までは30分位だから寝ないようにしようと思っていたのに、いったん切れてしまった緊張の糸をもう一度張りなおすことは出来なくて、結局眠ってしまった。
駅の階段を下りてロータリーに向かうと、見慣れた先生の車が停まっていた。助手席側のドアを開けて乗り込むと、先生がちょっと微妙そうに首を傾げた。
「なんかまだ見慣れないな。その髪」
苦笑交じりの先生の言葉に、視界の上の方に入っている前髪をそっと指先でつまんでみる。先週末、ふと思い立ってバッサリと髪を切った。更にカラーもして、軽くパーマもかけて、私としては、着たかった服を着るのがもっと楽しくなった。
ずっと黒髪ロングだったのを急にショートにして、カラーもしたものだから会社では散々二度見されたし、返事をしても気づいてもらえなかったりもしたけれど、少なくとも同期の女の子達には可愛いと言ってもらえた。肝心の先生は、何も言ってくれないけれど。
「そんなに似合わない?」
「いや、んなことないよ。つーか、その髪あれっぽいんだよな。んーと……あれ」
「あれって言って出てこないの、歳なんだよ」
「うるせぇな。しばくぞ」
舌打ちした先生に睨まれるけれど、先生はちゃんと加減してくれるのを知ってるから、怖くは無い。
「あぁ、思い出した。あれだよ、トイプードル」
「それ、犬じゃん」
「お前、犬よりは猫っぽいよな」
何それ、と拗ねた私を他所に、先生はくしゃくしゃと私の髪を撫でて笑う。可愛いとか、似合うとか、他に言うこと沢山あるじゃん、と口を尖らせてしまう。
そんな会話をしながらも、先生と会って緊張の糸が切れたのか一気に眠気が押し寄せてくる。仕事を終えた疲れもあったけれど、ここ最近あまりよく眠れていなかったのもあって、車の揺れが少し心地よい。
「昨夜も全然寝れなかった」
「大丈夫だよ。友達だろ?」
先生の言葉に頷いたものの、漠然とした不安は簡単に消えてはくれない。
明日、ほぼ5年ぶりに美咲と圭ちゃんに会う。自分から会いたいと連絡したくせに、いざ会うとなったら凄く不安で、夜に何度も目を覚ますようになってしまった。あまりにも寝不足なので今日は先生の所に泊めてもらう。先生の傍なら、きっと安心して眠れるから。
「眠かったら寝てていいぞ」
「やだ。頑張る」
先生の家までは30分位だから寝ないようにしようと思っていたのに、いったん切れてしまった緊張の糸をもう一度張りなおすことは出来なくて、結局眠ってしまった。