冷たい雨の降る夜だから
 ヤバかったとは一体どういうことなのだろう。それが引っかかりはしたものの、嬉しかった。これを喜んではいけないのは判っているけれど、新島に心配してもらえるのが、ちょっとだけ特別な感じがして嬉しかったのだ。

 だけどそんな「何か」なんてしょっちゅう起こるわけもなく。新島に電話をするような機会はないまま、何もしないまま夏休みは過ぎていく。翠は何度かたいしたことの無いメールを送ってはみたけれど、新島の返事はいつもそっけない。むしろ疑問系で出さなきゃ返信がないのでは?という勢いだ。

 今も何てメールを送ろうか?と考えながら翠はベッドに転がっていたけれど、返事をもらえそうな内容が思い浮かばない。ご飯何食べた? 今日は何してた? そんなことを聞いてもきっと返事が返ってこない気がして、翠はかれこれ30分はメールの推敲を重ねていた。

 新島はもともとそんなしゃべる方ではないし、もちろんメールに即返事を返してくれるわけでもない。そんな人だから、会って話さないと気分が出ない。

 ……会いに行っちゃおうかな。

 ふと思い立ったことに、ベッドからぴょこんと跳ね起きた。

 考えてみたら、新島は夏休み中も学校に居ると言っていた。夏休みはあと1週間くらいある。夏休みの宿題を新島の所でやればいいのだ。

 明日、学校に行こう! と翠は携帯を放り出してウキウキと支度をはじめた。
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