冷たい雨の降る夜だから
翠は新島のジャージ姿を想像してみたものの、なんだかしっくりこない。……スーツだよ、やっぱ。その方が似合うもん、と考えながら、翠は新島を改めて見る。背はすっごく高くはないけど、別に低くはない。175cm位かな?髪は真っ黒、眼鏡をかけたインテリ系で、やや細身でスーツが似合う。
普段はどんな服を着ているんだろう?
「先生の私服見てみたい」
「却下」
興味本位で言った言葉は、容赦なく一蹴されてしまった。
「先生のけちぃ」
「俺、職員室で仕事あるから。……あんまフラフラ出歩くなよ」
新島は、ふくれっ面をした翠の頭にぽんっと手を置いて、机の上においてあったクリアファイルを手に物理実験室準備室を出て行った。一人残された、物理実験準備室。
ここに一人でいるのは、だいぶ慣れた。
最初はちょっと落ち着かなかったけど、最近はすっかり馴染んで、学校のどこよりも居心地がいい。なにより、この部屋で待ってたら必ず新島に会えるし。戻ってこないメールに憂鬱になるよりずっと良いや、と翠は伸びをした。会ってもメールでも言葉はそっけない事に変わりはないけれど、会ったら頭撫でてくれる。ちゃんと目を見て話してくれるし。
言葉では来るなって言っていたけれど、その声音も呆れたように笑った眼差しも、本気で怒っていたりするわけじゃない。表情が見えるから…言葉が少なくても十分だった。
翠が何か飲もうと猫型冷温庫を開けると、中には水と缶コーヒーと、紙パックのりんごジュース。
新島はジュースを普段飲まない。だからこれはあたしの分、と翠は思った。冷温庫のラインナップは、ここに居てもいいと言ってくれている気がした。
「それにしたってさ、私服くらい見せてくれたっていいじゃんねー、猫ちゃん」
あんたの飼い主けちんぼだよ?と翠は猫型冷蔵庫の頭を撫でた。
普段はどんな服を着ているんだろう?
「先生の私服見てみたい」
「却下」
興味本位で言った言葉は、容赦なく一蹴されてしまった。
「先生のけちぃ」
「俺、職員室で仕事あるから。……あんまフラフラ出歩くなよ」
新島は、ふくれっ面をした翠の頭にぽんっと手を置いて、机の上においてあったクリアファイルを手に物理実験室準備室を出て行った。一人残された、物理実験準備室。
ここに一人でいるのは、だいぶ慣れた。
最初はちょっと落ち着かなかったけど、最近はすっかり馴染んで、学校のどこよりも居心地がいい。なにより、この部屋で待ってたら必ず新島に会えるし。戻ってこないメールに憂鬱になるよりずっと良いや、と翠は伸びをした。会ってもメールでも言葉はそっけない事に変わりはないけれど、会ったら頭撫でてくれる。ちゃんと目を見て話してくれるし。
言葉では来るなって言っていたけれど、その声音も呆れたように笑った眼差しも、本気で怒っていたりするわけじゃない。表情が見えるから…言葉が少なくても十分だった。
翠が何か飲もうと猫型冷温庫を開けると、中には水と缶コーヒーと、紙パックのりんごジュース。
新島はジュースを普段飲まない。だからこれはあたしの分、と翠は思った。冷温庫のラインナップは、ここに居てもいいと言ってくれている気がした。
「それにしたってさ、私服くらい見せてくれたっていいじゃんねー、猫ちゃん」
あんたの飼い主けちんぼだよ?と翠は猫型冷蔵庫の頭を撫でた。