冷たい雨の降る夜だから
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今日は同期の飲み会だと言うのに、空は夕方に近づくにつれて薄暗くなっていく。刻一刻と雨の気配を強めていく空に憂鬱な気持ちを募らせていると、その気持ちに応えるかのように就業間際にはポツリポツリと窓に水滴が弾け始めた。あぁ、降りだした……と小さなため息を漏らしたのと同時に、ピコンっと社内メールのアイコンが跳ねる。残業にならないといいなと思いながら開くと、中身はとっても軽い、さやかからのメールだった。
『雨降ってきた。傘持ってきてないよ~』
今日は朝から天気予報で雨だって言ってたじゃん。そう思いながらも、さやかのこういう所は嫌いじゃない。甘え上手だし可愛いと思う。
『傘あるよ。一緒行く?』
『入れて入れて! ちょっとかかりそうだから休憩室で待ってて貰ってもいい?』
『いいよ』
そんな社内メールを終えて、滞りなく仕事も終えてロッカーに向かう。エレベーターホールから窓の外を見ると、夜なのにビル明かりで灰色の空から細い線を描いて雨粒が落ちてきていた。
「翠、お疲れ」
ぼんやりとしていた私を現実に引き戻したのは、同期の里美の声。
「雨降りだしちゃったね。傘持ってる?」
「うん。持ってる」
答えるのと同時にちょっと表情をほころばせた里美をみて、ちょっと申し訳なくなる。
「けど、さやか入れてく約束しちゃったから……」
流石に傘一つに3人じゃ、傘の意味が無くなりそう。私の言葉の意味を汲んで、里美も眉を寄せて頷いた。
「そっか。夏帆様、まだ終わらないかしら」
「マナは? 傘持ってそう」
「あ、そっか。今日はマナも居るもんね。ちょっとロッカーで待ってみようかな」
マナこと愛香は、私たちの同期の一人。同期の女の子で今本社に居るのは、私たち営業部の各課に配属されている4人と、総務部の愛香だけ。今日の同期の飲み会は、当たり前だけど愛香も一緒だし、各部署に配属されている男子たちも来る。
里美が化粧直しをしている間に、夏帆も愛香も揃って、さやかを待つ私は一旦3人と別れて休憩室に向かった。
お昼時とはうって変わって人のいない休憩室。窓際のテーブルに座って外に視線を投げると、雨粒が落ちているのが街灯の明かりに浮かび上がる。
冬の雨は冷たい。あの日と、同じだ。思い出してしまった事にため息をついて目を伏せると、あの日の記憶が押し寄せてくる。
今日は同期の飲み会だと言うのに、空は夕方に近づくにつれて薄暗くなっていく。刻一刻と雨の気配を強めていく空に憂鬱な気持ちを募らせていると、その気持ちに応えるかのように就業間際にはポツリポツリと窓に水滴が弾け始めた。あぁ、降りだした……と小さなため息を漏らしたのと同時に、ピコンっと社内メールのアイコンが跳ねる。残業にならないといいなと思いながら開くと、中身はとっても軽い、さやかからのメールだった。
『雨降ってきた。傘持ってきてないよ~』
今日は朝から天気予報で雨だって言ってたじゃん。そう思いながらも、さやかのこういう所は嫌いじゃない。甘え上手だし可愛いと思う。
『傘あるよ。一緒行く?』
『入れて入れて! ちょっとかかりそうだから休憩室で待ってて貰ってもいい?』
『いいよ』
そんな社内メールを終えて、滞りなく仕事も終えてロッカーに向かう。エレベーターホールから窓の外を見ると、夜なのにビル明かりで灰色の空から細い線を描いて雨粒が落ちてきていた。
「翠、お疲れ」
ぼんやりとしていた私を現実に引き戻したのは、同期の里美の声。
「雨降りだしちゃったね。傘持ってる?」
「うん。持ってる」
答えるのと同時にちょっと表情をほころばせた里美をみて、ちょっと申し訳なくなる。
「けど、さやか入れてく約束しちゃったから……」
流石に傘一つに3人じゃ、傘の意味が無くなりそう。私の言葉の意味を汲んで、里美も眉を寄せて頷いた。
「そっか。夏帆様、まだ終わらないかしら」
「マナは? 傘持ってそう」
「あ、そっか。今日はマナも居るもんね。ちょっとロッカーで待ってみようかな」
マナこと愛香は、私たちの同期の一人。同期の女の子で今本社に居るのは、私たち営業部の各課に配属されている4人と、総務部の愛香だけ。今日の同期の飲み会は、当たり前だけど愛香も一緒だし、各部署に配属されている男子たちも来る。
里美が化粧直しをしている間に、夏帆も愛香も揃って、さやかを待つ私は一旦3人と別れて休憩室に向かった。
お昼時とはうって変わって人のいない休憩室。窓際のテーブルに座って外に視線を投げると、雨粒が落ちているのが街灯の明かりに浮かび上がる。
冬の雨は冷たい。あの日と、同じだ。思い出してしまった事にため息をついて目を伏せると、あの日の記憶が押し寄せてくる。