冷たい雨の降る夜だから
6年分の涙
仕事中、画面の右下でぴこんっと社内メールのポップアップが跳ねる。表示されている差出人は夏帆だった。

『昨夜どうだったの?』

 どうだった? そう聞かれると、私自身もなんだかよくわからない。昔と場所が変わっただけで、私と先生の関係は何ら変わらないような気もする。

『普通にご飯食べて、ちょっと飲んで家まで送ってもらった』

 当たり障りのない事実だけを返信をして暫くすると、メールが返ってくる。

『それだけ?』

 それだけ? と問われると、ますますよく判らない。昨夜は高校生の頃よりもずっと距離が近い気がした。一度も言ってもらったことのなかった言葉ももらった。だけど、だからと言って先生との関係が何か変わったのかと言われるとそれも違う気がする。

『よくわかんない』

『ランチ行こうか』
  
 すぐに返ってきたメールに、短く返事をしてフロアの向こうにいる夏帆を見ると、遠目に目があった。
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