冷たい雨の降る夜だから
「北川、喉渇いたからコンビニ寄るぞ」
先生の声に顔を上げると、答えるより先に車はコンビニの駐車場に滑り込んでいた。
「車にいるか?」
「ううん、一緒に行く」
先生と一緒に入ったコンビニの中は、他の車は3台程しか停まってなかったのに、ジャージ姿の大学生が10人くらいわらわらといた。仲良さそうにワイワイと話しているのを聞いた感じ、部活後の様だった。大学生のレジの列がはけるのを待ちながら何となく店内を見て回る。足を停めたのは、スイーツの棚の前だった。そこには会社のコンビニに置いてあるのと同じ、生クリームが乗ったプリンが並んでいた。
先生、覚えてるかな? 昔、先生が買ってくれたプリンなんだけど…と先生に視線を向けた。
「食いたかったら買ってやるよ」
先生はいつも私の考えていることをかなり的確に読んでくれるけど、珍しく外れた。それが何となく嬉しくて笑みをこぼすと、先生は私が視線で追っていたクリームプリンを手に取った。
「大学の頃、部活やサークルやってたのか?」
問われた言葉に、気まずくなって俯いて首を横に振った。
「怖かった……から」
「そっか」
先生の手が、くしゃっと私の頭を撫でる。
お会計は私がお財布を出すより先に先生にあっさり一緒に済まされてしまって、結局買ってもらったプリンとお茶が私の持っているレジ袋には入っていた。
「プリン、今食うの?」
クスッと笑って言われると、なんだか食い意地が張ってると言われた気がした。それは無意識に表情に出てたらしい。ククッと喉をならして笑った先生は、後部座席のドアを開けた。
「前で食うと外から丸見えだから後ろで食えば?」
ドアまで開けてもらったら乗らない訳にもいかないし、ちょっと膨れて車に乗ると、隣に先生が乗ってきた。