冷たい雨の降る夜だから
「今どこ?」

「家の近く」

 電話の先で先生が少し呆れたように笑う。

「会いたいなら学校の近くで降りろよ」

「ごめんなさい」

 だって、ここまできたけどやっぱり会いたいって思ったんだもん、と伝わらないのは判っていても口を尖らせてしまう。何より、先生の仕事終わっているかもわからなくて、電話に出てもらえないかもとすら思っていたのだ。

「今から帰るから寄ってやるよ」

「ほんと?」

 思わず声が一段高くなった私を、電話の向こうで先生が笑っていた。一旦家に帰ると出にくくなる気がして、先生が来るまで近くのコンビニで時間を潰すことにした。そろそろ来るかな?と時間を見計らって家への道を歩き出して公園の近くを通った頃、先生の車が私を追い抜いて、少し前でウインカーを上げて止まった。

「家に帰ったと思ってた」

 車から降りてそういった先生に駆け寄って、どちらともなく公園に足を向ける。いままでも何度か、夜に別れがたくて公園で喋ってた事があった。

「そういや、雨降ってたんだったな。車、戻るか」

 ベンチもまだ濡れていて、水溜りだらけの公園を見てそういった先生は、入り口の方に視線を向けると何か面白いものでも見つけたかのように小さく笑った。
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