冷たい雨の降る夜だから
「翠。入り口んトコに居るあれ、お前の妹だろ。絶対」
え? と振り返ると、公園の入り口の植木に、微かに動く人陰。先生に目で「見に行って来い」といわれて植木の陰を覗くと。そこには紛れもなく妹の藍がしゃがんでた。口元を両手で隠してたけど、それはもう面白いものを見たと言う様に目が笑ってた。
「なにやってんの、藍!!」
気まずそうに、だけど確実に面白がってる様子で私を上目遣いで見上げた藍は、だってぇと口を尖らせた。
「コンビニから出て来たの見えたからさ、追いついたら声かけようと思ってたの! そしたら男の人と会ってるからつい。お姉ってば、いつから彼氏居たの?!」
「ちょっと前から」
もう隠れる意味は無いよね、と立ち上がった藍が小さく頭を下げたので振り返ると、先生がすぐ近くに来ていた。
「えと、妹です」
「藍でーす」
あっけらかんと言う藍と私を見比べて先生は小さく笑った。
「どうも、新島です。……似てるな、やっぱり」
「えー、似てないよ」
「えー、似てないですよ」
返す言葉が、ものの見事に藍と被る。
「いや、声同じだから」
「電話じゃよく間違えられるけど……」
言いながら藍をちらりと見て、続けた言葉がまたしても藍と被る。
「そんなに似てないよね」
「そんなに似てないと思いますけど」
「お前ら、わざわざハモんなよ」
半眼で言われて藍と顔を見合わせる。確かに前は似てたかもしれない。年子で背も殆ど同じくらい、小さい頃からそっくりだねーといわれ続けていた。でも今は、藍はふつうのイマドキの女の子で、私は超地味な社会人で、全く別物だと思う。
え? と振り返ると、公園の入り口の植木に、微かに動く人陰。先生に目で「見に行って来い」といわれて植木の陰を覗くと。そこには紛れもなく妹の藍がしゃがんでた。口元を両手で隠してたけど、それはもう面白いものを見たと言う様に目が笑ってた。
「なにやってんの、藍!!」
気まずそうに、だけど確実に面白がってる様子で私を上目遣いで見上げた藍は、だってぇと口を尖らせた。
「コンビニから出て来たの見えたからさ、追いついたら声かけようと思ってたの! そしたら男の人と会ってるからつい。お姉ってば、いつから彼氏居たの?!」
「ちょっと前から」
もう隠れる意味は無いよね、と立ち上がった藍が小さく頭を下げたので振り返ると、先生がすぐ近くに来ていた。
「えと、妹です」
「藍でーす」
あっけらかんと言う藍と私を見比べて先生は小さく笑った。
「どうも、新島です。……似てるな、やっぱり」
「えー、似てないよ」
「えー、似てないですよ」
返す言葉が、ものの見事に藍と被る。
「いや、声同じだから」
「電話じゃよく間違えられるけど……」
言いながら藍をちらりと見て、続けた言葉がまたしても藍と被る。
「そんなに似てないよね」
「そんなに似てないと思いますけど」
「お前ら、わざわざハモんなよ」
半眼で言われて藍と顔を見合わせる。確かに前は似てたかもしれない。年子で背も殆ど同じくらい、小さい頃からそっくりだねーといわれ続けていた。でも今は、藍はふつうのイマドキの女の子で、私は超地味な社会人で、全く別物だと思う。