愛するもの。愛すべきもの。




「生憎記憶を取り戻そうとか思ってないから」



膝の上から退き、ベッドから出た。




「ハハッ」



何が面白いのか、お腹を抱えて笑っている。




何かを思い出したいとか




自分に何があったとか




周りとの関係、絆とか





今を見ていれば分かる。




思い出してもきっといいものではない。





「それでこそ莉子」




まだ笑ってる謎の男。




突っ込むことも否定することもなくドアに向かって歩いた。




「まぁ知らない方がいい過去もあるよ」




急に真剣な声になったから身体に何かが乗ったかの様に一瞬足が重くなったが、止まることなく出た。
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