愛するもの。愛すべきもの。




コンコン____



「失礼します」



他の先生がいた時の為に一応ノックはする。




何回か呼び出されて来たことはあるけど居た試しはない。




「待ってたよ」




ポンポンと自分が座っている横を叩いて誘導している。




座れという合図だ。




何の抵抗もなく指示通り座ればソファーのスプリングが軋んだ。




「今日うちおいで。帰っても一人だろ?」




明日休みだから泊まってけばいいし。そう付け加えた。




「やめとく」




何の迷いもなく断った。





記憶がない私からすれば彼氏でも出会ったばかりの男性だ。





そんな彼と一晩を共にするってことがどういうことか分かっているようで分かっていない。




「なんで?」





そう問われ、思ってるままに答えてしまっていいのだろうか。




確かに帰っても誰もいない。





未だに父親ですら会ったことがない。

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