無愛想教師の恋愛事情

今日は朝からジリジリと太陽が照りつけ、熱中症により救急搬送される人が続出しているとニュースで報じられていた。

時刻は夕方。いくらか涼しい風が吹いてくる。といっても気温は28度。あいつも来るし、エアコンはまだつけておくか。

不本意だが、四人分の夕食メニューを考えた。
簡単に姉ちゃんの手料理をたべさせてなるもんかと、哲は歪んだ理由もあって夕食作りに励んでいる。とりあえず、下ごしらえは済んだし、サラダも作った。あとは30分前にさっと料理すれば食べられる。
よし。 いつでも来い。

玄関のチャイムが鳴り、来客の訪れを知らせる。唯がぱたぱたと走り、玄関ドアを開けた。

「こんにちは。」
「こんにちは、先生！」
微かに微笑む一之瀬先生に、鼻息荒く唯が挨拶をする。

「さっ、ささ、どうぞ、どうぞ。」

殿様か。

「今日は冷たいお飲み物を用意しました。あと、お姉ちゃん特製のお菓子もありますよ！」

あ、馬鹿。そんなもん勉強に必要ないだろ。

先生は、笑いながら勉強する部屋、といっても姉ちゃんと唯が使う部屋だが、俺にも挨拶をくれながら入っていった。

「それは大変ありがたいが、俺が出した宿題はやってあるかい？」
「もちろん！はいこれです！」

ふ～ん。俺はダイニングテーブルで、英語の問題集を広げながら、聞き耳をたてた。あの唯が珍しく真剣に勉強しているようだ。

ちょっとでも脱線したらば、姉ちゃんに報告してやる。
すると、ドアが開き先生が話しかけてきた。

「哲君。君は大学受験なんだね。」

「はあ。」

「こう見えて、一応教師の端くれだから。わからない事や困ったことがあれば遠慮せず聞いてね。」

「ありがとうございます…」
爽やかな笑顔で、また唯がいる部屋に戻っていった。

(優しくて、優秀で、イケメン、爽やか…)

色々な褒め言葉といえる形容詞が頭に浮かんだ。俺はそれらの言葉をパパパとはたき落とした。