無愛想教師の恋愛事情
今頃は、一之瀬先生と唯は勉強してるのかしら。先生に迷惑かけて困らせてなければいいけれど。
夕飯は哲が作ってくれるから、帰りにプリンでも買って帰ろうかな…

「お先に失礼しますー。」「おつかれー。」

お店を出て、同じ駅ビル内にあるスイーツの店でプリンを4つ買う。先生は甘い物好きかしら。聞いてみよう。

プリンを手にして改札へ向かう途中、ふと視線を感じて振り向いた。けれど、誰も知り合いはいないようだ。気のせいか…。急いで帰ろう。


* * *


「またご馳走になってしまい、申し訳ない。」

「いいえ。唯が教えて頂いてるんですから、お夕飯くらい食べて頂かないと、こっちが申し訳ありません。あ、
それとも、何か予定とかありましたか?」

「いや、特にはないです。」

良かった。先生の為に食事を用意する人がいるかもしれないのに、何も考えてなかった…。

「じゃあ、遠慮なさらずに。哲の作るご飯は凄く美味しいんですよ。」

「姉ちゃんには敵わないよ。」

哲がちょっと照れたように呟く。

「哲君は料理が上手だね。これも全部君が作ったの?」

「まあ。姉ちゃんが仕事の日は作るよ。たまに唯にも手伝わせるけど。」

「俺は滅多に料理しないから、本当感心するよ。」

褒められて満更でもなさそうな哲。

「立派なのは姉ちゃんだから。俺は姉ちゃんの為じゃなかったら料理なんてやらないよ。」

「哲。ありがとう。」

本当に哲の優しさで、私は助けられている。哲が居てくれるから安心して仕事にも行けるのだ。

「わあ、でた。哲兄のシスコン。」

唯は姉と兄のやり取りが、ちょっとだけ面白くない。お姉ちゃんが大好きなのは、勿論哲に負けてない。

「俺のシスコンならお前も十分対象だよ。」

「そうなの?」

「劣等感って意味でな。」

「酷い~!お姉ちゃん!何か言ってやって!」

もう、二人のやり取りを聞いていると笑うしかない。先生の前で恥ずかしいけど、これがいつもの我が家なのだ。
先生も笑っていて、私と目が合った。

「楽しいですね。」
「はい…。」

我が家は問題が山積みだ。でも、こうして笑いあえる時間が私にとっては、かけがえのない宝物なのだ。




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